映画やドラマを観ていると「私が死んだらお墓はいらないわ。思い出の海にまいてちょうだい…」なんて場面がありますよね。

主人の伯父は海が好きな人で「散骨して欲しい」と遺言を残しました。
当然、伯父の家族は伯父の遺志を尊重して、伯父の遺骨を散骨したのですが、散骨って意外と大変なんです。
今回は散骨についてお届けします。
散骨の費用と手続き
目次

メモ
「散骨だったらお墓もいらないし簡単だろ?」と安易に散骨を口にする方もおられますが散骨って残された遺族にとって意外と面倒だったりするのです。
終活をしていく中で「散骨」を検討するのであけば。法律や基礎知識を理解した上で、散骨を検討して戴きたいと思います。
散骨が法律に触れる可能性

また墓地・埋葬等に関する法律(墓埋法)では「焼骨の埋蔵は、墓地以外区域にはしてはならない」と定められています。
法務省は非公式ですが「節度を持って散骨が行われる限り違法ではない」という見解を示しているので「節度」さえ守れば散骨は可能です。
また、市区町村の条例で散骨を禁止している自治体もあります。
散骨に関する条例を設けている地方自治体
- 北海道長沼町
- 北海道七飯町
- 北海道岩見沢市
- 長野県諏訪市
- 埼玉県秩父市
- 埼玉県本庄市
- 静岡県御殿場市
- 静岡県西伊豆町
- 静岡県熱海市
- 静岡県伊東市
- 東京都

遺骨はパウダー状にする必要があります
法務省は「節度を持って散骨が行われる限り違法ではない」としていますが、具体的に「節度」は何を意味するのでしょうか?
曖昧な表現で分かりにくいところですが、「節度」には「骨を遺骨だとわからないような状態にする」事が含まれてます。

「海に散骨」と言っても、実際にまかれるのは「遺骨をパウダー状にしたもの」に限られます。
散骨は岸から離れた海で
墓埋法では「焼骨の埋蔵は、墓地以外区域にはしてはならない」となっています。
メモ
- 墓埋法が示している「埋蔵」とは、土中に埋めることを意味します。
- 墓地以外の土中に散骨することは、墓地埋蔵法違反罰せられることになります。
- 「墓地内の自然葬」という方法であれば別ですが土中に埋める方法での散骨は出来ません。
また、海上で散骨する場合も岸の近くで漁業権が存在する海中に散骨すると、漁業権者などから精神的苦痛を理由とした慰謝料請求や風評被害を理由とした損害賠償請求を受ける場合があります。
散骨業者に散骨を委託する場合の費用
ここまで読んでいただくと「散骨って以外と大変」と言う事がお分かりになるかと思います。
個人で散骨するのは大変だ……と言うことで、最近は散骨を請け負ってくれる業者が増えてきました。

散骨のプランと価格
- 委託散骨 50,000円~
- 合同散骨 100,000~
- 個人散骨 250,000円~

委託散骨
委託散骨の特徴
- スタッフに遺灰を預けて遺族の代わりに散骨してもらいます。
- 写真や証明書などが付くことが多い。
- 散骨日時の指定はできない。
- 比較的リーズナブル
自分の手で遺骨を弔うことが出来ないのは残念ですが、費用的には1番リーズナブルなのは助かりますよね。
遺族が高齢だったり、体調的に不安がある場合は船に乗っての散骨は負担になるため、委託の方が良いように思います。
合同散骨
合同散骨の特徴
- 複数組の遺族が一隻の船に乗船します。
- 乗船人数に制限がある場合があります。
- 少しでも散骨の費用を抑えたい人向き。
- 日時指定はできないところが多い。

伯父の場合は合同散骨でした。
ちなみに、その時にかかった費用は17万円と聞いています。
個人散骨
故人散骨の特徴
- 一隻の船を一組の遺族がチャーターする。
- 乗船人数は船の定員に順ずる。
- 希望日時を指定できることが多い。
- 至れり尽くせりの感あり。
- 費用は最も高い

託す業者によっても違ってくるかと思いますが、到れり尽くせりな感じはありますが、船を1艘チャーターする為、当然費用は高くなります。
自力で散骨する
法務省の言うところの「節度を持って散骨」が出来るのであれば、業者に頼まずに自力で散骨することも可能です。
骨をパウダー状にする道具などもあり、購入したりレンタルする事も出来るようです。
散骨道具のレンタルを紹介しているHP
http://yasurakaan.jp/funkotsusaishin-ren/
伯父の散骨に関わってみて感じたこと

メモ
散骨の船に乗る遺族が散骨する海に近い場所で暮らしているなら問題はないのですが、そうでない場合は小旅行に行く感覚で散骨場所に行く必要があります。
遺族全員が元気な状態なら問題ないのですが、高齢者や体調の悪い人を伴っての散骨はけっこう大変なんですよね。
伯父の家族は「遺言だから希望を叶えてあげたい」と言うことで散骨を選びましたが、残された伯母は「自分の時は納骨堂でも永代供養でもなんでもいい。子どもに手間をかけさせたくない」と言っていました。
散骨のメリットとデメリット
「自分の遺骨は散骨して欲しい」と考えている方は散骨のメリットとデメリットをしっかり理解して戴きたいと思います。
散骨のメリット
- お墓を建てるより費用がかからない
- 永代供養料が必要ない
- 残された家族に供養を強いなくても良い
散骨のデメリット
- 家族が立会う散骨の場合、散骨自体が意外と大変
- 散骨後は手を合わせる対象がない

散骨には浪漫がありますが…
新しくお墓を建てるとなると、100万円~200万円かかると言われています。
それを考えると船をチャーターして散骨するのはお墓をを建てるよりリーズナブルなんですよね。
散骨を希望する方には色々な理由があるかと思います。
散骨を希望する理由
- お墓はいらない
- 海が好き
- 自然に還りたい

ただ「終活」と言う意味で考えるなら「残されて遺族の負担」も考慮する必要があるかと思います。
配偶者やお子さんが散骨にかかる手間を理解した上で「任せていいよ」と言ってくれるなら問題はありません。
散骨を希望する場合は、家族の理解を得るところからスタートして戴きたいな…と思います。
注意ポイント
映画やドラマでは気軽に「骨は海にまいて」なんてセリフが出てきますが、現実に行うとなると簡単な事ではありません。
しかし葬儀や供養の形が多様化している今、散骨という選択肢があるのも事実です。法律を知った上で、納得のいく形で故人を供養なさるのがベストだと思います。